平日にも関わらず大盛況の店内には、フォークど真ん中世代と思しきオジサマたちはもちろん、20~30代の若者の姿も少なくない。仲間同士テーブル席で盛り上がる一団もあれば、カウンターでマスターやお店の看板娘ミッキーさんと楽しそうに談笑する一人客もいて、それぞれに楽しげな雰囲気だ。店内奥に作られた本格的なステージでは、誰彼ともなくギターを取り上げ、気持ち良さそうに弾き語りを始める。1曲終わるごとに店中のお客さんがいっせいに拍手や歓声を送り「次は○○さん、あれ歌ってよ! 」なんて声も飛び交う。もちろん聴
く専門でもOKで、その楽しみ方はとにかく自由。1度でも来店すればすんなりと常連の仲間入りができてしまいそうな、この上なくピースフルな雰囲気に満ちている。「どんな方でも大歓迎! 興味があれば是非1人でも遊びに来て下さい。そしてせっかく落陽の扉を開けてくれ
たのなら、その先の心の扉も開いて楽しんでいって下さい! 」とマスターが語る通り、老若男女の垣根なく、音楽好きならば誰でも肩肘張らずに楽しめる、独特な暖かみを持った店だ。
かの名曲、吉田拓郎の「落陽」から店名を取ったと言うだけあって、マスターもお客さんも筋金入りのフォーク好き。当然60~70年代往年の名曲オンパレードかと思っていると、耳慣れない曲もチラホラ流れ出す。聞けばお客さんのオリジナルという事で、ここではカバーと
半々くらいの割合で歌われるそう。「オリジナルデー」と銘打ったライブイベントや、CDの制作等、お店発の企画も盛り沢山だ。さらに山崎ハコ、中川イサト、猫…と言った、今も第一線で活躍する錚々たるアーティストのライブも少なくなく、カウンターを見渡せば、見覚
えのあるサインが書かれたボトルが並んでいたりする。フラリと遊びに行ったら、憧れのスターが横で飲んでいた、なんて事もあるそうだ。
古き良き時代を懐かしむだけでなく、新たなクリエイティビティ発信の場としても大いに機能している当店。「お客さんの中には、凄い才能を持った人もいるんじゃないですか? 」との質問に「もちろんたくさんいますよ! 楽器や歌の上手い下手じゃない、楽しそうに演奏
し歌える事が何よりの才能だし、僕はそういう表現が一番好きなんです」と笑顔で答えてくれたマスターの言葉に「落陽」の、さらには“フォーク”その物のあり方、楽しみ方が凝縮されているような気がした。
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