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とっておきの気分はこの曲で決まりっ!
selected by 上田親寿

上田親寿
1965年生まれ。大学入学を機にドラムを始め、以後約20年にわたり数々のメジャー及びインディーズバンドで活躍。その後ひょんなことからアラブのパーカションと出会い、00年日本初のアラブ・パーカションユニット「タブラ クワイエサ」を結成。現在は音楽を通じての日本&アラブの文化交流活動に情熱を注ぐ。音楽における守備範囲は60年代歌謡曲〜ロック全般〜ワールドミュージックまで広範囲にわたる。
http://kwaiesa.net/

「いつもとは違った特別な気分にさせてくれるあの曲この曲〜」とっておきの気分というのはどんな気分なんだろう。たぶん「いつもとは違った気分」を言うのだろう。今回選んだ10曲は何の脈絡も無くジャンルも時代もさまざまですが、何故か私の心を「とっておき」にさせてくれます。そのなかには喜怒哀楽と言った分かりやすい感情もありますが、言葉には表せないような微妙な感覚も含まれます。というわけで、マニアックなセレクトもありますがぜひ私の「とっておき」を共有してみてください。

1. オリビア・ニュートン・ジョン 「Have You Ever Been Mellow」
曲のタイトルは「mellowな気持ちになったことがある?」との問いかけである。オーストラリア出身のカントリー歌姫が歌うこの曲は「そよ風の誘惑」と邦題がつけられて大ヒット、いまだにテレビCM等のさわやかBGMに使われる永遠のスタンダードである。喜怒哀楽なら人種が違ってもわかり合えるのだが、「mellow」はどんな感じなのでしょう。それが知りたい方は辞書を引くよりこの曲を聴いてください。聴き終わったらきっとわかるはずです。
2. クィーン 「Mustapha」
数多くのシングルヒットを生み出したアルバムの一曲目にしてはあまり知られていない。歌詞はどう聞いても英語ではなく、聞き取れるのは曲を通してフレディが連呼する「ムスタファ・イブラヒム」だけであった。アラブ人によくある名前である。フレディ・マーキュリーがアフリカのイスラーム国家「ザンジバル」出身だと知ったのはかなり後のことである。それを知って聞くと、アラビアの地に飛んだ気分にもなるから不思議なものだ。
3. 海原千里・万里 「大阪ラプソディー」
海原千里は現在の上沼恵美子である。約30年前、日本中を席捲したアイドル漫才師姉妹は当時流行っていた山口百恵の歌をよくネタに取り入れていた。タイトルは戦前歌謡「東京ラプソディー」のパロディーである。リリース当時は予想もしなかったが今やご当地ソングの代表格となった。私にとってはとっておきの時間の重みを感じる曲なのである。
4. KC&ザ・サンシャイン・バンド 「(Shake, Shake, Shake) Shake Your Booty」
70年代後半のディスコ・ブームの火付け役ともなった白人黒人混成のファンクバンド。歯切れのいいホーン、緩いグルーブで「That's the Way」などの大ヒットを飛ばした。この曲は小ヒットではあったが、ディスコではしょっちゅうかかっていた。理由は明白、なぜかとっておきに踊りたい気持ちになってしまうのだ。ちなみにBootyは米国スラングで「お尻」のことである。
5. 渚ゆう子 「京都慕情」
昭和40年代に大ヒットしたこの曲、作曲したのはギター親父たちのヒーローとして50年以上も君臨し続けるベンチャーズである。ハワイアン歌手へと転身していた元民謡歌手と当時日本でだけよく知られていたギターバンド、そして若き日の天才作詞家・筒美京平の今考えても奇跡のコラボ。 イントロからサイケ感たっぷりで、とっておきに和洋折衷な気分にさせられる曲である。
6. あべ静江 「みずいろの手紙」
携帯電話やメールが人々の主な通信手段になってどれくらいだろう。でもその前は黒電話や手紙がその役割を果たしていた。今でも自分の気持ちを伝えるツールとして手紙はまだまだ有効だ。通信が手軽になればこそ心のこもった自筆は価値がある。当時の清純派アイドルの独白から始まるこの曲は、とっておきに手紙時代の懐かしい気分にしてくれるはずだ。手紙が題材のヒット曲なんてもう出てこないんだろうなあ。
7. ポール・ウェラー 「FOOT OF THE MOUNTAIN」
これほどまでに自国イギリスのアーティストたちに尊敬され愛されている男がいるだろうか。彼は70年代後半からThe Jam、80年代をスタイル・カウンシルといったユニットでトップを突っ走ってきた。両者の形は全く違うが歌に託していたメッセージは同質のものであった。90年代からシンプルなロックバンドに形は戻り、歌声は人々を鼓舞し続ける。とっておきにクールで熱い気持ちにさせるロック魂な作品。
8. ザ・ビーチ・ボーイズ 「Good Vibrations」
まさに名が表すとおりのこの曲、いわゆるいい感じなのである。天才ブライアン・ウィルソン率いるこの集団はただの脳天気なだけの西海岸の兄ちゃんたちに見えるのであるが、制作に関してはかのビートルズよりも偏執的に録音実験を繰り返していたのだ。この曲もそう。歌の合間の不思議なスキャットや間奏に耳を傾けて欲しい。明るい気持ちがさらに明るくなるはず。
9. あきれたぼういず 「地球の上に朝が来る」
タイトル曲はこのあと「その裏側は夜だろう」と続く。真理である。昭和12年、今から60年も前に川田義雄、芝利英、坊屋三郎、益田喜頓の4人のモダンボーイで結成された音楽コントグループは浪曲、オペラ、ジャズ等当時の音楽の全てのエッセンスを取り入れた、今でいうところのミクスチャーである。戦争に向かっていた時代に驚くべきエンターテインメントである。日本人アーチストにもこういう人たちがいたのかと誇りに思える一連の作品である。
10. ロバータ・フラック 「Killing Me Softly With His Song」
コーヒーのCMでも有名なこの曲は1973年の大ヒットである。邦題は「やさしく歌って」なのだがそんな歌詞はどこにも無く「やさしく殺して」とだけ歌っている。失恋した相手が歌手で「実らない恋ならいっそあなたの歌で殺して欲しい」わけなのだ。これを友人の黒人女性シンガーに教えてもらったときはショックだった。当時この邦題をつけたと思われる日本のレコード会社に特に裏切られた気分にさせられた切ない名曲である。