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ひとりで過ごす、深い夜に〜心地よい眠りへ誘う音楽〜
selected by 甲斐みのり

甲斐みのり
1976年生まれ。「女性の憧れ」「叙情あるものつくり」がテーマの雑貨ブランド「Loule」(ロル)を主宰するかたわら、書籍・雑誌への執筆やスタイリングをおこなう。著書に『京都おでかけ帖〜12ヶ月の憧れ案内〜』(祥伝社)、『乙女の京都』(マーブルブックス)、『甘く、かわいく、おいしいお菓子』(主婦の友社)『詩集と刺繍』(COTO)、『リボン』(Loule)がある。2006年7月には、池袋コミニティカレッジでお菓子と旅をテーマにした講座を開講。
http://www.loule.net/
ときどき、眠れない夜があります。昼間、とてもすてきな出来事があったり、その反対で気持ちが沈んでしまうようななにかのせいと、理由はさまざま。ベッドに入って目をつむっても、気持ちが高ぶって眠りにつくことができず、夜は朝に向かって深くなるばかり。そんなときには、感情がなだらかになり、心地よい眠りへ誘ってくれる音楽を、小さな音でかけるのです。眠りは、新しい気持ちで朝をむかえるための、一番の薬だから。「これは朝でもなく、昼間でもなく、誰かと過ごすにぎやかな夜でもなく、ひとりで、考えごとがあって眠れない夜のためにあるかのよう」な音楽を選びました。
1. ペンギン・カフェ・オーケストラ 「Cutting Branches For A Temporary Shelter」
実験音や民族音楽を基調に、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどの楽器を奏でる、イギリス出身のサイモン・ジェフスによるプログレグループが「ペンギン・カフェ・オーケストラ」。牧歌的な世界に響く子守唄のように、静かに空気をふるわせるこの曲は、太陽がのぼる昼間に聴いても、心地よい眠りに誘われます。
2. ピーター、ポール&マリー 「Puff, The Magic Dragon」
61年にニューヨークで結成された3人組みのフォークグループ。「パフ」という魔法の竜が子どもたちと楽しく遊び、そして別れるまでを歌った歌。子どもの頃、眠る前に母親に読んでもらった絵本や童話の世界を思い出し、気持ちが穏やかになります。
3. ブリジット・フォンテーヌ 「Comme A La Radio」
「ラジオのように」という邦題で知られる、サラヴァレーベルを代表する名曲。アート・アンサンブル・オブ・シカゴの演奏と、ブリジット・フォンテーヌの繊細さと力強さを持ちあわせた声は、海の底のような深みと、透明感があります。「おおげさね」と笑われてしまうかもしれないけれど、「人生について」考える夜、この曲を聴きたいと思うのです。
4. マイケル・ナイマン 「The Promise / The Heart Asks Pleasu」(アルバム『The Piano』収録)
映画「ピアノ・レッスン」で流れる美しい名曲のライブ演奏。映画の主人公・エイダの故郷であるスコットランドとはこんな風景なのだろうと、まだ見ぬ国を想像させてくれる魅力を持っています。マイケル・ナイマンのつくる音楽は、夜を感じるものが多く、高ぶった感情をなだらかにする力を秘めています。
5. ヤン・ティエルセン 「Comptine D'Ete N17」
トイピアノ、アコーディオン、オルガン、バイオリンなどさまざまな楽器で独特のメロディーを奏で、映画「アメリ」のサウンドトラックを手がけたことで日本でも馴染み深くなったヤン・ティエルセン。彼が生み出す音楽は、「おもちゃ箱をひっくりかえしたよう」とか、「おとぎの国に迷いこんだよう」と表現されています。この「La Valse Des Monstres」という、オルゴールのような静かで優しい曲は、「明日の朝が楽しみ」でしかたがなかった、クリスマスイヴの眠りが思いおこされます。
6. 荒井由実 「ベルベット・イースター」
人恋しい夜に、この歌はよく似合います。恋人や母親が思い出されたり、子どもの頃の映像が浮かんでくるのです。曲も歌詞も、ちょっと切ない哀愁があるけれど、この歌を聴きながら眠ると、懐かしくてあたたかい夢を見ることができそうな気がします。
7. くるり 「グッドモーニング」
この歌を聴いて、とても単純なことだけれど、「夜があるから朝がくる」というあたりまえに気がつき、夜への霧がかかったような不安がかきけされたことがあります。「夜を想うことは、朝を想うことでもある」と感じることが、とても大切に思えたのです。
8. くるり 「Tonight Is The Night」
この歌の中にいる人は、ひとりきりの夜を、日常を、楽しんでいるから好き。静かな「いつも」を淋しいと思うのではなく、直接的に「こんな夜もあるよ」というのでもなくて、ときにまかせてただ身をおくだけでいいじゃないかと、とても理想的な夜が描かれている歌。
9. フィッシュマンズ 「夜の想い」
ときどき夢の中で、本当は流れているはずのない音楽が聴こえているような気がすることがあるけれど、この歌はその夢の中に響く音がかたちになったような歌。潜在的な感情や、言葉にできなかった想いを、夢の中で確認しているような。ゆるんだ世界の中で、自分をたしかめているみたいに。
10. フィッシュマンズ 「エヴリデイ・エヴリナイト」
好きな人のことを考えながら過ごす夜に聴きたいと思う歌。「今はこの歌をひとりで聴いているけれど、次に聴くときはふたりでいたい」という願いを込めて。ひとりの夜に絶望しなくていいんだよと、優しく語りあかけてもらっているような気がして、安心して眠りにつくことができるのです。
