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深夜のスーパーで聞きたいジャズ
selected by 新美博允

新美博允
1976年7月31日生まれ。175cm,66kg。15歳でギターを始める。 23歳で作詞作曲を始める。 28歳で歌を歌い始める。そういう特技を生かして、お金をいただいて暮らしています。木下ときわ(vo)とのバンド"DOIS MAPAS"の新作CD「極東組曲」&「AGUAS DE MARCO」が各方面から大絶賛の声!ライブスケジュールなどは以下サイトでご確認ください。http://www.geocities.jp/dois_ms/...
最近のスーパーって深夜営業する店が増えていますね。現代人の夜型化に合わせた結果だと思うのですが、しかし経営者は肝心なことを忘れていると、利用者の立場で思いました。買い物したら、家でゆっくりご飯を食べて寝ようと思っている僕の耳に飛び込んでくる音楽はいつも、元気いっぱいの「野菜には栄養がある♪」「みんなで魚を食べよう♪」という音楽です。う〜む。田舎の親から説教されているような気分になってきます。それならば、営業時間に合わせて音楽も夜型にしましょうよ!スーパーでこれらの曲をかけてもらえる日は遠い気がしますが、携帯音楽プレイヤーに入れるなどして、深夜に入店してみて下さい。きっとしっくり合うはずです。
1. ジュリー・ロンドン 「Blue Moon」
想像してみて下さい。深夜残業がようやく終わった仕事帰り、ふと近所のスーパーに入るとジュリー・ロンドンの耳元にささやきかけるような声が聞こえてくるのです。バーニー・ケッセルのいぶし銀のギターとともに。これから一人で弁当を食べてテレビ見て寝ようとしている独身男性には、意表をついた音のプレゼントになるでしょう。そこで聞きたいのは「みんなで魚を食べよう〜♪」では決してありません。
2. ソニー・ロリンズ 「Old Devil Moon」
濃いダシのきいた、あまりにも味のあるソニー・ロリンズのテナー・サックスの音。そしてそれを受けとめるのに十分な、エルビン・ジョーンズ(ds)という巨大な器。アメイジングな演奏です。これが店内でかかっていると、お手頃価格の味噌や醤油でも、とてつもなくコクのある一品という錯覚をおこす可能性があります。
3. ビル・エバンス 「Yet Never Broken」
ピアノの紳士ビル・エバンスの、ヴィレッジ・バンガードでの最後のレコーディング。マーク・ジョンソン(b)&パット・ラバーバラ(ds)を率いるこのトリオの到達点は、かつての黄金期に勝るとも劣らないでしょう。ただならぬ音の美しさ、メンバーとの創造性のやりとりなど、この人が何を表現したかったのかがはっきりと分かる録音です。
4. カーメン・マクレエ 「A Song For You」
ジュリー・ロンドンが恋人のささやき声だとしたら、カーメン・マクレエのこの曲は、おふくろの「おかえり!」に匹敵するパワーと包容力を持っています。数多の歌手がカバーしてきたレオン・ラッセルの名曲。「この曲をあなたのためだけに〜」という歌ですが、歌い手によってこうも印象が変わるものかと感心させられる仕上がり。
5. チャールズ・ミンガス 「Summertime」
Summertimeといえばジャズのスタンダード曲としてあまりに有名ですが、ベーシストであるミンガスの手にかかると、ひと味違った良さがぐっと引き出されてきます。強い意志を持ったベースの極太音と、生々しく力強いビート感は、がっつり肉を食べたくなるようなパワフルさ。深夜の肉売り場はコレで決まりでしょう。
6. ウェス・モンゴメリー 「Fingerpickin'」
元祖肉体系ギタリスト。家族を養うために色んな肉体労働を掛け持って、ジャズギターもその一つだったのだけど、いつしかこの道の代表的存在として語られるようになった人です。「Fingerpickin'」の由来は、ピックではなく親指でフレーズを弾く独特の奏法からきています。親指と弦の組み合わせでしか出ない、コクのある音。
7. セロニアス・モンク 「Ask Me Now」
鬼才ピアニストによる鬼気迫る演奏。曲も音も気品に満ちあふれています。ヨーグルト・チーズ・漬け物などシンプルなんだけどうま味が凝縮された食べ物のような音が聞こえてきます。スーパーの漬け物売り場でこの曲が流れていたら、ものすごく品のある味がするように見えてしまいそうです。
8. チェット・ベイカー 「There Will Never Be Another You」
何気なく鼻歌を歌っているかのような、でも心に深く染み込んでくるチェット・ベイカーの声。ボサノヴァの歌にも通じる飾らない歌唱法は、男性ジャズボーカルのひとつの原型にもなりました。会社帰りのOLさんの疲れた心を、深夜のスーパーでもしっとり癒してくれることでしょう。
9. フランク・シナトラ 「Brazil」
各国の地名がタイトルに付いた曲を集めて、超大物歌手と世界旅行しよう、という趣の企画盤。ブラジルの偉大な作曲家アリ・バホーゾの名曲を、軽妙かつ深みのある歌声で歌う。子どもの夜型化が問題となっている昨今ですが、いたずら好きの子どもが買い物カートをスケボー代わりに、深夜の店内を走り回ってお買い物。そんなイメージの曲ですね。
10. Wayne Shorter 「Teru」
ゆったりした濃密な時間が流れるこの曲は、抽象画というよりはむしろ水墨画のような、モノトーンな洗練を感じる音です。テナーサックス奏者としてだけでなく、作曲家としてのウェイン・ショーターの深みが存分に出ています。僕は大人になってようやくこのシブさが少し分かるようになってきました。というわけでこの曲は和風なオトナ限定、日本酒・焼酎売り場です。
