松任谷由実 インタビュー

過去って必ずしも“古い”だけじゃない。自分次第で、新しくもなるんだ
“旅”がキーワードであり、主題ともなったユーミン3年ぶりのニュー・アルバム『そしてもう一度夢見るだろう』。そこで歌われている“旅”とは、乗り物でどこかへと移動して、はいそれでおしまいといったたぐいの、単純なものからはおよそほど遠い。
“記憶”が距離と重なることで、重層的な奥行きが見えてくる旅。もっと言うなら、自分が歩んできた“時間”。その連なりのはるか遠くへと視線を送ることで、過去が今一度、新しい手触りをたたえて、実感されるようになってくる。記憶をたどることが、未来へと歩みを進める上での道しるべともなる。そうした意味合いをはらんだ“旅”なのだ。
「自分の見方、感じ方によって、“新しい過去”を手に入れることができるんだ。そんな実感があったんです。経験を積んできたことによって、“これはもう、1回やっちゃったことだから”と済んだことにしていたものが、今回「ピカデリー・サーカス」のような曲を書けたことを通じて、呼び出せた。過去って必ずしも“古い”だけじゃない。自分次第で、新しくもなるんだと」
とはいえ、ユーミン作品において“記憶”が重要な役割を果たしていること自体、彼女の歌に親しんできた聞き手には、よく知られた通り。“念写しているのかも”。そう彼女自身笑いながら語っていたが、聞き手それぞれの年齢、あるいは経験に応じて、懐かしくも、せつなくもなる。ダブル、いやマルチ・フォーカス的とも言える情景描写のたしかさは、今回の新作で言うなら「まずはどこへ行こう」のような曲にも明らかだ。

