キリンジ インタビュー

満足しないと次に進めないタイプなんでしょうね。逆に言えば、客観的に見えないというか、一つ気になるところがあったら、そこばかり気がいっちゃう
MSN:冨田さんも、そのあたりの変化を、実感していたのかもしれませんが、実際には『For Beautiful Human Life』を最後に、デビュー以来続いていた冨田さんの手を、ついに離れることになりましたよね。これは、どういう理由からだったのですか?
高樹:まあ、単純にたくさん作ってきたんで(笑)。それに、だんだんと作業の先が、読めるようになってきたっていうか、予定調和的になってきていたんですよね。別に、全然悪くはなかったんですけど、自分たちのスキルも、徐々に上がって来ていたんで、じゃあ、自分たちでやろうかと。冨田さんに対しても、“ああしてくれ、こうしてくれ”って注文するのも、悪いしなって気持ちもあったし。冨田さんは、ミックスの時のジャッジとか、本当にすごいんですけどね。ただ、自分たちとしては、冨田サウンドの後継者とかって意識もなくて。和声の感覚とかは、最初から自分たちでも持っていたことだし。とはいえ、こないだも今のエンジニアの人に、“キミら、冨やん(冨田)と最初に一緒にやっちゃったから、こんなに作業が細かくなっちゃったんだろうね”って言われましたけどね(笑)。このチマチマ、ネチネチした作業は、確かに冨田さんの影響かもしれませんね(笑)。整合感が出ないようにチマチマやってる、という意味でね。まあ、でも、俺より泰行の方が、性格とかは冨田さんに似てますけどね。
泰行:そうですねえ。冨田さんが、マスタリングに17時間かけたって話を聞いても、“俺ならつきあえるな”って思っちゃいますから(笑)。満足しないと、次に進めないタイプなんでしょうね。逆に言えば、客観的に見えないというか、一つ気になるところがあったら、そこばかり気がいっちゃうってことなんでしょうけど(笑)。冨田さんは、そういうのに対して、親身になってくれる人でしたね。
MSN:ただ、『For Beautiful 〜』前後から、ライブ・バンドとしての側面を、強めていきましたよね。それが、冨田さん離れにつながったのかと思っていました。
高樹:今までライブで新曲を発表して、それからレコーディングという順番で作ることが、あまりなかったんでね。確かに『For Beautiful〜』の頃は、少しはそうやって作ってやっていたんです、「the echo」とか「僕の心のありったけ」とか。ツアーとかやってると、バンド・メンバーから、“この曲カッコいいよね”とかって言われて、じゃあ、レコーディングもこのメンバーでやってみようかな、って思ったりしたんですよね。情に流されるっていうか(笑)。でも、やっぱりスタジオ作業は、スタジオ作業って分けるのが、自分たちには合ってる、って気づいちゃったんですよ。

