槇原敬之 インタビュー

“悲しみ”もイヤなものだけど、じつは生きていくうえで大事なものかもよ、と。
MSN:やっぱり「どんなときも。」にもありますけど、“好きなものは好き”と。
槇原:そうですね。今回は流行にこだわらずに、自分の好きなものを作ることができたと思います。ちょうど、とあるセレクトショップのオーナーが、“ずっと成功し続けてる秘訣は流行りに振り回されないこと。自分が何が好きかだけは見失わないで、自分の好きなものを考えるだけよ”と、インタビューに答えていたのを雑誌で読んで。その言葉が僕のアルバム作りを支えになりました。流行ってるものじゃないといけない、とか他人からの見られ方を気にしがちですけど、自分の好きなものを忘れちゃいけない、と。
MSN:おっしゃる通り、アルバム全体が槇原さんらしいポップでキラキラしてるようなサウンドに仕上がってますね。けれどタイトルが『悲しみなんて何の役にも立たないと思っていた。』。逆にいうと“悲しみ”が作品作りのきっかけになったんですか。
槇原:いつも詞のテーマって、ぼんやりしたところから始まるんですけど、今回はかなり明確にならざるを得なかったというか…。
MSN:というのは?
槇原:じつは5匹飼っていた犬の1匹が死んだんです。自分がミルクやご飯あげて育てたのが2年ちょっとで死んでしまったていう、すさまじい辛さがありました。“悲しい”っていう言葉の使い方、間違ってたんじゃないかっていうくらい、ほぼ毎日泣いてましたね。自分がこういう悲しさ、辛さを知らなくちゃいけない自分だと思うしかしょうがない。そんな悲しさを1年ぐらい突き詰めて行くうちに、自分がいままでわかり得なかったことが見えてきたんです。ほかの犬が普通に歩いているのを見てるだけで、涙が出てきたり、抱っこして身体があったかいのに“生きてるんや”と感じたり。なんかバカみたいですけど、こんな気持ちになれるなら他人からバカみたいっていわれてもいいや、と。そんな気持ちを聴いてもらいたかったんです。
MSN:命の大切さを痛いほど実感されたんですね。そういう意味で“悲しみは役に立つものだ”と。
槇原:そう教えてくれた、死んだ“ゆんぼ”という犬に感謝ですよね。“悲しみ”もイヤなものだけど、じつは生きていくうえで大事なものかもよ、と。人間って生まれてきた以上、誰もがいつかは家族や大切な人との別れがある。そんなときに“もっとああしておけばよかった…”という悔いが少しでもないように。このアルバムを聴きながら、自然にそのヒントに出会えたらいいな、と。

