安藤裕子 インタビュー

“月桂冠”CMソングとしてオンエアされると同時に、問い合わせが殺到した「のうぜんかつら(リプライズ)」収録の2ndアルバム『Merry Andrew』。そして、続く最新アルバム『shabon songs』でも聴かせた、独特の“波動”を持つ歌声に魅了されたリスナーの輪は、いまも大きく広がり続けている。日本の音楽シーンに新たな風を吹き込む光り輝く才能、安藤裕子が届けたニュー・シングル「海原の月」は、『池袋ウエストゲートパーク』など数々のヒット作を手がける堤幸彦監督作品『自虐の詩』の主題歌。“愛”という普遍的なテーマを、彼女にしかふるえない筆さばきで描いた感動の名曲の誕生秘話と、そこに息づく独特な感性にせまる。
取材・文/道明 利友 撮影/森リョータ
堤さんが、映画の本編が始まったところから“安藤さんの声が楽器的に浮遊しててほしい”んだと。
MSN:今回の曲作りは、堤監督とのディスカッションから始まったんですよね。
安藤:はい。映画のイメージを、丁寧にすごく説明してくださって、曲を作るにあたっては、撮影現場に呼んでくれたりしました。映画の舞台が、下町の小っちゃい街での暮らしを描いていて、私が描いてるのも、ドラマティックな場面っていうよりは、“人が対峙する瞬間”を描いてるだけの歌詞で、すごく短い一瞬なんです。だから、壮大な感じじゃなく、いなたい感じがほしいって話になって、鍵盤はウーリッツァーを使ったり。あと、堤さんが、映画の本編が始まったところから、“安藤さんの声が楽器的に浮遊しててほしい”んだと。じゃあ例えば、“(生でハミング) Hu Hu Hu Hu…”って輪唱っぽく歌って、ストリングスと絡むのはどうですかってアイデアを、私からも出したりして。
MSN:うん、なるほど。そのイントロのハミングはまさに浮遊感があって、そこから曲全体に不思議な余韻が広がっていく感じがします。
安藤:その浮遊感っていうイメージが、堤さん彼のなかでは“クラゲ”だったらしいんですよ。水の中を、大量にクラゲが漂うみたいな感じが…。“生きる”、というか。それがすごく映画のイメージだったらしいんです。
MSN:そのシーンは、PVでも印象的にインサートしてきて。クラゲは海を漂って、人は人生を漂う、みたいな…。浮遊感っていう言葉は、イメージとしてはまさにですね。
安藤:うん。そうですね、本当に。映画自体が人が生まれ落ちて死ぬまでの、それぞれの意味を見つけることができるのか、否か。映画全体を通して感じるイメージがそういう、“生命”のイメージだったんですよ。
