矢沢永吉 インタビュー

引き出しも一杯ある玄人中の玄人が、あえて分かりやすいミックスしようというのが『YOUR SONGS』ですから
そういう意味で言えば『YOUR SONGS』は、メロデイメーカー・矢沢永吉を味わうには最適だろう。どの曲も歌とメロデイを中心にしてリミックスされている。それぞれが一枚のオリジナルアルバムのような、起伏と統一感を持ったアルバムとなっている。
矢沢永吉:「エンジニアとは最初にキッチリと話しましたよ。聞き手ってどういうところを聞いていると思うって。俺たちも、そうじゃない。昔、ビートルズを聞いていた時って、まずはジョンレノンの声とギター、ポール・マッカートニーとの二重奏の格好良さですよ。それからジョージ・ハリスンのそんなにうまくないんだけど分かりやすくて妙に格好いいギター。もう少し経ってからリンゴ・スターのあのたまったようなドラムがすごく良いとか、そこにゆくんだけど、細かいことは後よ(笑)。シンプルですよ。そこを思い出して、楽曲の良さ、メロデイがストーンと入ってくるミックスにしたいって。そっから入ってゆきましたね」
矢沢永吉は、“音”にこだわり続けてきた一人でもある。80年代の初めに、洋楽のような音が日本ではなぜ作れないと、単身アメリカに渡ったのが全てを物語っている。『YOUR SONGS』に選ばれているのはそうやって生まれたアルバムの曲ばかりだ。それが“曲とメロデイ”に集約されて新たに蘇った。
矢沢永吉:「人間って面白いね。最初から聞き手にストーンと入るような音楽とか、分かるわけないんだよね。キャロルでもそうだけど、若い頃の曲が分かりやすいのはそれしか出来ない、未熟だからなのよ。でも、極めたいと思うじゃない。それは向上心の証しじゃない。でも、それが足を引っ張るんだよねえ。どんどん難しくなって分かりにくくなる。作り手オンリーになってゆく。それがあるところまで行くともういいかって、分かりやすいところに戻ってゆくんだよね。面白いもんだよ。そんなことは30年前には気づきませんよ。今の矢沢はそうだと思ってください。グルッと回って、引き出しも一杯ある玄人中の玄人が、あえて分かりやすいミックスしようというのが『YOUR SONGS』ですから。この『1』から『6』は、僕にとっての贈り物、財産ですね」
今だから分かること。『YOUR SONGS』は、キャロルからデビュー35周年の結晶だろう。10月からはツアー「THE REAL」が始まる。年末恒例の武道館5日間公演の三日目、16日は、前人未踏、100回目の公演となる。
取材・文/田家秀樹 撮影/柳大輔

