スピッツ インタビュー

三輪「レコーディングって、地味な作業だったりして。同じメンツで昼夜も分からずにやるものでしょ? でも今回は大橋(卓弥)くんと植村花菜ちゃんが参加してくれたことによって、その瞬間だけ(笑)盛り上がったんだ。あれは、今回のレコーディングのイベントだった」
スピッツ結成20年目の夏に、33枚目のシングルがドロップされる。タイトルは「群青」、そしてカップリングが「夕焼け」。青とオレンジという、スピッツの世界を彩ってきた大切なカラーが基調になった、「一見」するとスピッツ王道の世界が窺えるシングルである。
しかし。「一聴」すると、これが鮮やかなまでの冒険作であることに気付くことだろう。何故ならば――マサムネ以外の歌が聴こえてくるからである。
「群青」は、3人のボーカリストが素晴らしいハーモニーを永遠に歌いきる、つまり「ずっと3声が聴こえてくる」シングルである。ゲスト・ボーカルは、スキマスイッチの大橋卓弥、そしてシンガーソングライターの植村花菜である。この国のポップ・ミュージックの歴史に残る、印象的な声を持つ草野マサムネのボーカルが、スピッツの本質的なイメージを表し続けてきただけに、今回の「3声」は、スピッツというバンドの定則から、大きく逸脱した挑戦を感じる。
草野:常々3声で、しかも自分でハモるんじゃない感じの曲をやりたいと思ってて。やっと実現しました。もとからピーター・ポール&マリーみたいなのが好きだし、ティーンエイジ・ファンクラブとかもハモりが良い感じじゃないですか。スピッツでもそういうのをやりたかったんです。でも俺の声が高いこともあって、なかなかバンドでは実践できなくて(笑)。しかも、ハモリ癖を持っていない3人(メンバー)なんで、そういうふうにはなかなか行かなかったんですよね。
田村:でもあれだよね、一昨年のイベントで(奥田)民生くんとか平井(堅)くんとかと一緒にやったのが大きいんじゃない?
草野:ああ、そうだ。民生さんと平井くんと3人で、民生さんの「さすらい」をハモったら気持ちよくって。その時に3声やりたいなって気持ちが蘇ってきたんですよ。で、じゃあまずはハモりやすいメロディを作ってみようって思って、凄くシンプルなメロディーにしたんです。
田村:だから最初のリハーサルの時はハーモニーもないし、あまりにも淡々としていて、「なんて地味な曲だ」って思った(笑)
草野:ははははは、そうだよね、確かに。
田村:去年の4月に、草野がイベントでスキマスイッチと一緒にやって。ボーカルを大橋くんと交えたら、凄くよかったらしくて。それで、3声でやるんだったら、大橋くんみたいな感じの声がいいよねっていうことになって、「じゃあ大橋くんでいいじゃない!」ってことに。
草野:そうそうそう。大橋くんとハモっててね、一瞬どっちが自分かわからなくなる瞬間があったりするんですよ。倍音の感じが近くて。楽しかったですね…でも確かに去年辺りから、スピッツ以外のミュージシャンと、何か一緒にやるってことに対して、面白くなったのはありますね。スキマスイッチのふたりとライブでセッションしたり、KREVAとのもそうだし…でも、これで多分やっと、普通のバンドの人並みだと思うんですよ(笑)。スピッツって鎖国している国だから(笑)、ようやく普通に開国してるかな、今。
田村:それでも、多分まだまだなんだろうね。自分達としては、凄い挑戦をしてるんだけどね、今回は。
草野:植村花菜ちゃんはね、CDも聴いてて。亀田さんがプロデュースの曲もあって、ずっといい声だなあって思ってて。で、亀田さんもこの曲なら、植村花菜ちゃんが合うんじゃないかって話になって。あのね、女性のほうが、人選が難しいんですよ。喰われるから、俺が(笑)。だから、悪い意味じゃなく、俺を喰わない声っていうのが欲しくて。優しい声ですよね、花菜ちゃんの声は。…ん? 他にも3声の曲? 作りましたよ、もう一曲(笑)。でも凄いスローテンポだから、今回のアルバム向きではないなって思ってて。一応キープです。

