椎名林檎 インタビュー

【新曲について】
●今回、うち1曲「花魁」は浮雲さんの曲ですけど、新たに書き下ろした新曲が5曲収録されていますね。
椎名林檎:「曲を書いていた当初は色々な曲を切り張りして作るつもりだったから、この曲のあるパーツと別の曲のあるパーツは一緒に再生しても成立するように、という感じでその組み合わせを考えながら作ったんです。で、それをやるためには一つ一つの楽器をセパレートで録らなければいけないんですけど、楽器をセパレートで録るのはお金がかかるうえに、作業面で大変で、結局、そういうやり方でのレコーディングが出来なかったんです。まぁ、曲それ自体は組み合わせを考えて書いてあるので、ゆくゆくはそういうレコーディングをやりたいなぁとは思っているんですけどね」
●ということは、後で編集することを前提に複数の曲を同時並行で書きながら、パズルのような曲作りをやっていた、と。
椎名林檎:「だから、面白かったですよ。あるパートの8小節なり、16小節なりをループさせた時、別の曲のどのパートと同時に進行出来るか。そういう作業って好きなんだなって思いましたね」
●そういう曲作りって、過去にやってました?
椎名林檎:「かつて井上雨迩さんが“リンゴカタログ”を作ったのは、そういう考え方ですよね。ただ、あの時は技術を駆使して、ある曲のパーツと別曲のパーツを無理矢理合わせたもので…」
●「リンゴカタログ」は過去の椎名林檎作品を切り張りして作ったリミックスというか、コラージュみたいなものですもんね。
椎名林檎:「そう。でも、今回は最初から編集して、繋ぐことを考えて作ったという。当初はインストゥルメンタルで作っていたんですけど、“やっぱり歌を乗せて欲しい”って言われた時のための歌詞を書く作業に一番時間がかかって、それを含めて、1ヶ月くらいですね」
●それでは個々の曲について伺っていきたいんですけど、まず、 3曲目の「錯乱」は、ビッグバンド・ジャズにアレンジされた華やかな新曲ですが、歌詞は引き裂かれるような感情が歌われていますね。
椎名林檎:「映画側のスタッフの方々は、菅野美穂さんとか木村佳乃さん、そしてアンナちゃん、それぞれのテーマ・ソングがあって、その登場シーンにテーマ・ソングがかかるようにしたかったようなんですけど、原作にしても、実際の映画でも、女性達は皆、そんなに違ったことで悩んでいないというか、感情の振り切れ方は同じ方向にある女の性でピークに来たり、沈んでいるように思ったので、一貫して“なんて、やりきれない”っていう曲が一曲欲しいなと思って、この曲を作ったんです。で、 聞いたところによると、原作の安野さんは“錯乱”と“花魁”の造語のつもりで“さくらん”っていうタイトルを付けられたということだったので、その陰と陽ということで“錯乱”と“花魁”を作りました」
●この曲は2バージョンあって、ブラジリアンなアレンジの“ONKIO ver.”(シングルのc/wに収録)では、アレンジががらりと変わっていますね。
椎名林檎:「劇中、河原のシーンで使っている“ONKYO ver.”は、映像を観た時、なんか、お祭りビートが聞こえちゃったというか、どうしても、 そういうイメージから離れられなくて、生でパーカッシブなアレンジにしました」
●4曲目の「ハツコイ娼女」も新曲ですが、この曲には「“firstlove”singer」という英語タイトルが付けられていますね。
椎名林檎:「そもそも、この曲の打ち込みパートを作っている時は菅野さんの表情とか、着物の色合いをイメージしていたんですけど、結局は劇中に使わなかったので、自分の作品でよりパーソナルな曲にしようと思って、声の録り方とか詞世界に引っ張られながら、作り上げました」

